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外国人労働者に安全衛生教育が必要な理由と法令上の義務
安全衛生教育とは、労働者に職場の危険・有害要因を理解させ、労働災害や健康障害を防止するために実施する教育です。外国人労働者についても、雇入れ時や作業内容の変更時、一定の危険・有害業務に従事させる際などには、労働安全衛生法に基づく教育を適切に実施する必要があります。
安全衛生教育の種類・内容と実施方法
安全衛生教育には、雇入れ時・作業内容変更時教育、特別教育、職長等教育などがあり、対象者や業務に応じて教育内容が定められています。教育計画を作成し、担当者を決めたうえで実施・評価を行い、必要な記録を適切に管理することが重要です。
外国人労働者に安全衛生教育を実施する際の注意点
外国人労働者への教育では、日本語の理解度などに応じて、本人が理解できる言語の教材やイラスト・写真、動画などを活用し、内容を正しく理解できているか確認することが重要です。
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外国人労働者を雇用する企業にとって、安全衛生教育は、労働災害を防ぎ、安心して働ける環境を整えるために欠かせません。
外国人労働者の場合、日本語の理解度や文化・慣習の違いなどから、作業手順や危険箇所、注意事項が十分に伝わらないこともあります。そのため、外国人労働者が教育内容を正しく理解できるよう、伝え方を工夫することが重要です。
また、安全衛生教育には、労働安全衛生法上、事業者に実施が義務付けられているものもあり、外国人労働者を雇用する場合も適切に実施する必要があります。
本記事では、外国人労働者に安全衛生教育が必要な理由をはじめ、法律上の義務や具体的な内容・種類を整理したうえで、実施手順や注意点まで体系的に解説します。
安全衛生教育とは?外国人労働者に必要な理由や事業者の義務
安全衛生教育とは、事業者が労働者に対し、職場における危険・有害要因を正しく理解してもらい、労働災害や健康障害を未然に防ぐために実施する教育です。
近年、日本で働く外国人労働者は増加しています。外国人労働者に対しても、安全衛生教育を適切に実施する必要があります。
特に、日本語の理解度や文化・慣習などの違いにより、作業手順や危険を知らせる表示、注意事項などが十分に伝わらない可能性があるため、外国人労働者が内容を理解できる方法で教育することが重要です。
安全衛生教育には、労働安全衛生法に基づいて実施が義務付けられているものと、事業者の努力義務とされているものがあります。雇入れ時の安全衛生教育など、法令で義務付けられた教育については、対象となる労働者に対して適切に実施しなければなりません。
以下では、外国人労働者に安全衛生教育が必要な理由や、事業者に求められる対応について詳しく解説します。
外国人労働者に安全衛生教育が必要な理由
安全衛生教育の目的は、職場における労働災害の発生を防止することにあります。特に外国人労働者を雇用する場合は、単に教育を実施するだけでなく、本人が内容を正しく理解し、安全な作業を実践できるようにすることが重要です。
外国人労働者は、日本語能力や日本での就労経験に個人差があるため、安全に関する指示や専門用語、危険を知らせる表示などを十分に理解できない場合があります。また、日本と母国との文化・慣習や職場のルールの違いから、日本の職場では一般的とされる注意事項が正しく伝わらない場合もあります。
そのため、外国人労働者への安全衛生教育では、労働者の日本語能力などに応じて、本人が理解できる言語の教材やイラスト・写真、動画などを活用し、具体的な作業を通じて理解度を確認するなどの工夫が求められます。
また、安全衛生教育は雇入れ時に一度実施すれば良いものではありません。担当する業務や使用する設備、作業環境などの変化に応じて、必要な教育や周知を継続的に行い、安全な行動を職場に定着させることが、外国人労働者を含む従業員の労働災害防止につながります。
外国人労働者への安全衛生教育に関する事業者の義務
外国人労働者を雇用する場合も、日本人労働者と同様に、労働安全衛生法に基づく安全衛生教育を適切に実施する必要があります。
労働安全衛生法第59条では、事業者に対し、労働者を雇い入れた時や作業内容を変更した時に安全衛生教育を実施することを義務付けています。また、危険または有害な業務に従事させる場合には、特別教育の実施も義務付けられています。
主な内容は以下のとおりです。
- 労働者を雇い入れた時の安全衛生教育
- 作業内容を変更した時の安全衛生教育
- 危険または有害な業務に従事させる際の特別教育
外国人労働者に安全衛生教育を実施する際は、日本語の理解度などを踏まえ、本人が教育内容を理解できる方法で実施する必要があります。必要に応じて、本人が理解できる言語の教材やイラスト・写真、動画などを活用し、作業上の危険や安全な作業方法を正しく理解できているか確認することが重要です。
厚生労働省では、多言語に対応した業種共通の安全衛生教育教材や業種別教材を公開しています。自社の業務に応じて、こうした教材を活用すると良いでしょう。
労働安全衛生法に基づく安全衛生教育の種類と内容

労働安全衛生法では、事業者が労働者に対して実施すべき安全衛生教育について、場面や対象ごとに規定しています。以下では、主な安全衛生教育の種類を紹介します。
出典:厚生労働省「安全衛生キーワード」
①雇入れ時・作業内容変更時教育
雇入れ時・作業内容変更時教育は、労働安全衛生法第59条に基づき実施される教育です。具体的な教育内容は、労働安全衛生規則第35条で定められています。
労働安全衛生規則第35条では、雇入れ時および作業内容変更時の安全衛生教育として、次の8項目を定めています。
- 機械等、原材料等の危険性または有害性およびこれらの取扱い方法に関すること
- 安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能およびこれらの取扱い方法に関すること
- 作業手順に関すること
- 作業開始時の点検に関すること
- 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因および予防に関すること
- 整理、整頓および清潔の保持に関すること
- 事故時等における応急措置および退避に関すること
- 前各号に掲げるものの他、当該業務に関する安全または衛生のために必要な事項
これらの項目は、業務に起因するリスクを体系的に網羅したものであり、労働者が安全に業務へ従事するための基礎となる教育内容です。
【注意】2024年4月1日より省略規定が廃止
雇入れ時・作業内容変更時教育では、従来、金融業や情報通信業など一部の業種に限り、前述の1〜4の事項を省略することが認められていました。
しかし、2024年4月1日の法改正によって、この省略規定は廃止されています。該当業種であっても、その従事する業務に関する全ての教育事項を実施しなければなりません。従来の省略を前提とした運用を継続すると、法令に適合しない運用となるため注意が必要です。
自社の安全衛生教育の内容が改正後の基準に適合しているかどうか、速やかに確認することが求められます。
②特別教育
特別教育とは、危険または有害な業務に労働者を従事させる前に、事業者が実施しなければならない安全衛生教育です。
特別教育が必要な業務は、労働安全衛生規則第36条で具体的に定められています。アーク溶接や小型車両系建設機械の運転などが対象業務として定められており、これらの業務に労働者を従事させる場合は、事前に特別教育を修了させなければなりません。
教育の科目や実施時間は安全衛生特別教育規程で定められており、その内容に従って実施する必要があります。なお、特別教育の受講時間は労働時間に該当するため、時間外労働となる場合は割増賃金の支払いが必要です。
また、外部講習を受講させる場合の受講料や交通費などは、原則として事業者が負担する必要があります。
さらに、特別教育を実施した際は、受講者や実施年月日、教育科目などの記録を作成し、3年間保存しなければなりません。記録の管理まで含めて、はじめて法令に沿った運用といえます。
③職長等に対する教育
職長等に対する教育とは、政令で定める業種の事業場において、職長その他労働者を直接指導または監督する立場にある者に対して実施する安全衛生教育です。労働安全衛生法第60条に基づき、対象事業場では実施が義務付けられています。
教育内容は、以下の5項目です。
- 作業方法の決定および労働者の配置に関すること
- 労働者に対する指導または監督の方法に関すること
- リスクアセスメントの実施に関すること
- 異常時等における措置に関すること
- その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること
職長等教育の対象業種は、以下の6項目です。
- 建設業
- 製造業(一部の業種を除く)
- 電気業
- ガス業
- 自動車整備業
- 機械修理業
対象となる6項目は変わりませんが、2023年4月の関係法令の改正に伴い、適用対象となる範囲が拡大されました。具体的には、これまで製造業に分類される業種のうち対象外とされていた「食料品製造業(うま味調味料製造業および動植物油脂製造業を除く)」「新聞業」「出版業」「製本業および印刷物加工業」の4業種が、新たに対象となりました。
自社の業種が対象に該当するかどうかを改めて確認し、必要な教育体制を整えることが求められます。
④安全管理者等に対する教育
労働安全衛生法では、事業場の業種や規模などに応じて、安全管理者や衛生管理者などの選任が義務付けられています。安全管理者は職場の安全に関する管理を、衛生管理者は労働者の健康や作業環境などの衛生に関する管理を担います。
安全管理者等に対する教育(能力向上教育)とは、こうした安全衛生活動を担う担当者の知識や能力の維持・向上を目的として実施する教育です。
一般の労働者向けの安全衛生教育は法律で実施が義務付けられているのに対し、本教育は労働安全衛生法に基づく事業者の努力義務とされています。しかし、安全衛生管理体制の要となる者を対象としているため、職場の安全衛生水準の向上・維持を図るうえで、積極的に実施することが求められます。
教育の具体的な内容は以下のとおりです。
⑤危険有害作業従事者教育
危険有害作業従事者教育とは、危険または有害な業務に現に従事している労働者を対象に、安全衛生の水準の維持・向上を目的として実施する教育です。労働安全衛生法第60条の2に基づき、労働災害の動向や技術革新の進展などに対応した教育を実施することが、事業者の努力義務として定められています。
特別教育と混同されることも少なくありませんが、対象となる業務や労働者自体が重なるケースも多く、実施のタイミングや法的な位置づけなどに以下のような違いがあります。
特別教育が「業務に就く前に必要な知識・技能を習得させるための法令上の義務」であるのに対し、危険有害作業従事者教育は「すでに従事している労働者の知識・技能を維持・向上させるための努力義務」である点に主な違いがあります。
⑥健康教育
健康教育とは、労働者の健康保持・増進を目的として実施する教育です。労働安全衛生法第69条では、事業者は健康教育や健康相談など必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努めるものとされています。
近年では、生活習慣病予防やメンタルヘルス対策、受動喫煙防止、運動・栄養指導などを含めた健康づくり活動の一環として実施されることが一般的です。法令上は努力義務ですが、労働者の健康保持増進や生産性向上の観点から、多くの企業で取り組みが進められています。
自社で継続的に取り組む安全衛生教育
法令で定められた安全衛生教育を実施するだけでなく、教育内容を現場に定着させるための再教育や、自社の業務内容・職場環境に応じた教育を継続的に行うことも重要です。
外国人労働者の日本語能力や業務への習熟度には個人差があるため、一度説明した内容であっても、実際の作業を通じて理解できているか確認し、必要に応じて繰り返し教育しましょう。
以下では、法定教育を補完するために、自社で取り組みたい安全衛生教育の例を紹介します。
全ての労働者を対象にした継続的な安全衛生教育
法定教育で学んだ内容を現場で継続的に実践できるよう、全ての労働者を対象に、定期的な振り返りや再教育を行うことも重要です。たとえば建設業者の場合には、以下のような内容が挙げられます。
- 社内の安全衛生規則や基本ルールの再確認
- 保護具の正しい使用方法の実技確認
- ヒヤリ・ハット事例や労働災害事例の共有
- 異常時や災害発生時を想定した対応訓練
- 職場ごとの危険箇所や独自ルールの確認
また、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)や服装などの基本ルールに加え、機械設備の配置に応じた注意事項なども、定期的に確認する必要があります。繰り返し教育することで、知識の定着と職場全体の安全意識の向上につながります。
必要に応じてその都度行う安全衛生教育
法定の実施タイミングに限らず、必要に応じて安全衛生教育を実施することも重要です。たとえば、法令や社内の安全衛生規則・ルールが改正された際には、その内容を速やかに周知する必要があります。
また、自社や他社で労働災害が発生した場合は、その事例や発生原因を社内で共有し、安全対策へ反映させることが再発防止につながります。定期的な教育に加え、法令改正や災害事例などに応じた教育を適時実施することで、職場全体の安全意識を維持・向上できるでしょう。
安全衛生教育の実施方法

安全衛生教育を効果的に実施するには、場当たり的な運用ではなく、計画から実施までの手順を体系的に進めることが重要です。以下では、実施に向けた具体的なステップを順に解説します。
1.安全衛生教育計画を作成する
安全衛生教育を実施する際は、対象者、教育内容、実施時期、担当者、教材、実施時間、実施場所などを整理し、事前に教育計画を作成します。
外国人労働者が対象となる場合は、日本語の理解度や使用言語も事前に確認し、必要に応じて多言語教材や視覚的な教材を準備します。
法令によって教育科目や実施時間が定められている場合は、その要件を満たすように計画を立てる必要があります。また、対象者の経験や理解度、実際の作業内容を踏まえ、講義だけでなく実技や事例共有などを組み合わせることも重要です。
2. 安全衛生教育の担当者を決める
安全衛生教育を円滑かつ継続的に実施するためには、教育を担当する者や担当部署をあらかじめ定め、その役割を明確にしておくことが重要です。
事業場の体制に応じて、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、現場監督者、職長、人事・労務担当者などが、教育計画の策定や実施状況の管理を担います。
責任の所在を明らかにしておくことで、教育の抜け漏れや形骸化を防ぐことに役立ちます。
3.安全衛生教育の実施・評価を行う
安全衛生教育は、実施して終わりではありません。成果を継続的に評価し、改善につなげることが重要です。
最終的な目標は労働災害の防止ですが、教育直後にその効果を正確に判断することは容易ではありません。そのため、理解度テストや確認問題の実施に加え、実技確認や現場での行動観察などを通じて、受講者が教育内容を適切に理解・実践できているかを確認することが重要です。
また、一定の知識や技能を習得した従業員に、現場リーダーや教育担当者などの役割を担ってもらうことも有効です。
法定教育については、法令で作成・保存が求められる記録や、技能講習等の修了証を適切に管理しましょう。自主的な社内教育については、受講履歴や理解度テストの結果などを記録し、習得状況を可視化することが重要です。
教育の成果を見える化し、継続的な人材育成につなげることで、安全文化の定着や労働災害の防止につながります。
業務別に必要な安全衛生教育・資格の具体例
危険・有害業務の中には、特別教育や技能講習などを修了した者でなければ従事できないものがあります。また、業務を安全に行うためには、必要な教育・資格の確認に加え、作業前点検や立入禁止措置などの安全対策も欠かせません。
以下では、代表的な作業を例に、安全衛生教育の内容や安全管理上のポイントを紹介します。
フォークリフト作業の場合
フォークリフトの運転業務に労働者を従事させる場合、最大荷重1トン以上ではフォークリフト運転技能講習の修了、最大荷重1トン未満では特別教育の修了が必要です。
フォークリフト運転技能講習や特別教育の修了は、フォークリフトの運転業務に従事するための労働安全衛生法令上の要件です。公道を走行する場合は、これに加えて、道路交通法上必要な運転免許や車両に関する要件を満たす必要があります。
また、作業開始前の点検や定期自主検査を行うとともに、作業内容に応じて作業計画を作成するなど、安全な作業体制を整えることも重要です。フォークリフト運転業務従事者に対しては、継続的な安全衛生教育を行い、知識や技能の維持・向上を図りましょう。
クレーンの運転/玉掛けの場合
クレーンの運転や玉掛け作業では、クレーンの種類やつり上げ荷重に応じて、免許、技能講習または特別教育が必要です。必要な資格・教育の区分を事前に確認し、要件を満たした労働者を業務に従事させなければなりません。
クレーン作業では、以下のような安全対策を徹底することが重要です。
- 必要な資格を有する者がクレーンを運転する
- アウトリガーを作業条件に応じて適切に張り出し、機体を安定させる
- つり荷の下やクレーンの旋回範囲への立入りを防止する
- 周囲の作業者と合図方法を共有し、安全通路を確保する
玉掛け作業では、以下の点を確認します。
- 必要な資格を有する者が玉掛け作業を行う
- ワイヤーロープや玉掛け用具を使用前に点検する
- つり荷の重量や形状に適した玉掛け用具を使用する
- 法令上必要な措置に加え、「3・3・3運動」などの安全活動も活用して、つり荷や周囲の安全を確認する
安全衛生教育に関する注意点
安全衛生教育を適切に実施するためには、法令上の要件を正確に把握するとともに、実務上の留意点を事前に理解しておくことが重要です。以下では、担当者が特に注意すべきポイントを項目別に解説します。
安全衛生教育は年間計画を立てて実施する
安全衛生教育において、年間計画書の作成は法的義務ではありませんが、厚生労働省でも計画的な安全衛生活動の実施が推奨されています。計画書を作成し、PDCA(計画・実施・評価・改善)サイクルを継続的に回すことで、安全衛生管理の水準向上につながります。
場当たり的な教育では見落としやすいリスクも、年間を通じた計画的な取り組みによって体系的に管理しやすくなります。厚生労働省が公開している年間安全衛生管理計画に関する様式や資料も活用すると良いでしょう。
安全衛生教育の実施記録を適切に管理する
安全衛生教育を実施した際は、受講者や実施年月日、教育内容などを記録し、保存しておくことが推奨されます。特に特別教育については、労働安全衛生規則第38条により、記録の作成と3年間の保存が義務付けられています。
一方、特別教育以外の安全衛生教育については、法令上、記録の保存義務や保存期間は明確に定められていません。ただし、労働災害発生時の対応や教育履歴の管理に備え、教育記録を継続的に保存しておくことが望まれます。
教育の実施そのものと同様に、記録の管理も安全管理体制の重要な一部として位置づけ、適切に運用することが求められます。
雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育は遅滞なく実施する
労働者を雇い入れた際は、正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイトなど、雇用形態を問わず、対象となる労働者に安全衛生教育を実施する必要があります。
雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育は、雇入れまたは作業内容の変更時に遅滞なく実施します。特に、必要な知識を身につけないまま作業を開始すると危険が生じる業務については、実際の作業に従事させる前に教育を行うことが重要です。
なお、特別教育の対象業務については、当該業務に従事させる前に特別教育を修了させる必要があります。
派遣労働者については、雇入れ時の安全衛生教育を派遣元が実施します。一方、派遣先で作業内容が変更された場合の安全衛生教育や特別教育は派遣先が行い、派遣元と派遣先が連携して、作業環境や危険・有害情報を共有することが重要です。
職長等教育は職務に就くまでに計画的に実施する
労働安全衛生法第60条では、対象業種において、新たに職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する職務に就く者に対し、職長等教育を実施することが定められています。
職長等としての業務を適切に行えるよう、選任予定者を早めに把握し、職務に就くまでに教育を修了できるスケジュールを組むことが重要です。業務開始後に受講させる運用ではなく、計画的に教育機会を確保しましょう。
実際の従事者が必要な教育の受講・資格の取得を行う
業務ごとに教育の受講や資格の取得が義務付けられている場合は、実際にその業務に従事する本人が要件を満たす必要があります。「作業場に受講済みの人や有資格者が一人いれば良い」というものではありません。
特別教育、免許、技能講習など、それぞれの業務に必要な要件を確認し、従事者本人が満たしていることを確認しましょう。
自社での実施が難しい場合は外部機関を活用する
リソースや専門知識が不足しており、適切な安全衛生教育を自社で実施することが難しい事業者も少なくないでしょう。しかし、安全衛生教育は必ずしも自社だけで実施する必要はありません。
安全衛生関係団体などが開催する講習会や研修を活用することで、労働者が必要な知識や技能を習得できる環境を整えられます。自社の状況に応じて外部講習を活用することも、実効性の高い安全衛生教育を実施するための有効な方法です。
安全衛生教育に関する法令に違反した場合の罰則
法令により実施が義務付けられている安全衛生教育を実施しない場合、事業者は罰則の対象となることがあります。安全衛生教育が法令で義務付けられている本来の目的は、労働者の安全と健康を守り、労働災害を防ぐことです。
特に危険を伴う作業がある職場では、知識の不足や誤った手順によって、命に関わる重大な事故につながる恐れがあります。
また、技能実習生や特定技能外国人を受け入れている企業では、安全衛生教育に関する法令違反によって、外国人材の受け入れにも影響がおよぶ可能性があります。一定の法令違反に該当した場合には、技能実習や特定技能における欠格事由などに該当し、一定期間、新たな外国人材を受け入れられなくなる場合があるため注意が必要です。
適切な安全衛生教育を実施しなかった結果として事故が発生した場合、行政機関からの指導や企業の信用低下といった問題にとどまらず、労働者本人にも深刻な被害を及ぼすことがあります。
そのため、「罰則を受けないため」ではなく、働く人を危険から守るという事業者の基本的な責任として、教育体制を整備し、適切な安全衛生教育を実施することが求められます。
まとめ
安全衛生教育とは、労働者が職場の危険・有害要因を正しく理解し、労働災害や健康障害を防ぐために欠かせない取り組みです。事業者は、雇入れ時・作業内容変更時教育をはじめとする法定教育に加え、従事する業務や職場での立場に応じて、特別教育や職長等教育などを適切に実施する必要があります。
外国人労働者を雇用する場合は、日本語の理解度や文化・慣習の違いなどによって、安全に関する指示や注意事項が十分に伝わらない可能性があります。そのため、本人が理解できる言語の教材やイラスト・写真、動画などを活用し、教育内容を正しく理解できているか確認しながら実施することが重要です。
また、安全衛生教育は一度実施して終わりではありません。業務内容や設備、作業環境の変化などに応じて継続的に教育を行い、必要に応じて理解度を確認することで、安全な行動を職場に定着させることが求められます。法令上必要な教育や記録管理を確実に行うとともに、自社の実情に応じた教育体制を整備しましょう。
特に技能実習生や特定技能外国人を受け入れている企業では、安全衛生教育に関する法令違反が、罰則だけでなく外国人材の受け入れに影響する場合もあります。外国人労働者が安心して働き続けられる環境を整えるためにも、安全衛生教育を外国人雇用における重要な取り組みのひとつとして位置づけることが大切です。
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