このページでわかること
採用マーケティングの概要
採用マーケティングとは、マーケティングの考え方を採用活動に取り入れ、候補者との接点づくりから応募・選考・入社までを一貫して設計・改善する取り組みです。採用ブランディングや採用広報もその一部として捉え、転職活動を始めていない潜在層も含めて、自社への理解や関心を深めます。
採用マーケティングに取り組むメリット
転職潜在層との接点を広げ、自社に合う人材像を具体化できることがメリットです。候補者のニーズや採用課題を整理することで、求人媒体、人材紹介、SNSなどの手法を目的に応じて選びやすくなります。応募数や選考通過率、内定承諾率などを確認し、データに基づく継続的な改善にもつなげられます。
採用マーケティングの進め方と成功のポイント
採用課題の把握、人物像の設定、自社の強みの整理、候補者の行動や接点の設計、手法・チャネルの選定、効果測定・改善の6ステップで進めます。3C分析やペルソナなどを活用し、採用部門と現場が連携することも重要です。採用に関する課題は、Adecco(アデコ)へお気軽にご相談ください。
人材の採用が難しくなる中、求人を出して応募を待つだけでは、必要な人材との接点を十分に作れないケースが増えています。そこで注目されているのが、マーケティングの考え方を採用活動に取り入れる「採用マーケティング」です。
採用マーケティングでは、採用したい人物像を明確にしたうえで、候補者が企業を知り、興味を持ち、応募・選考を経て入社するまでのプロセスを設計します。さらに、各段階の数値を確認しながら施策を改善していくことも重要です。
本記事では、採用マーケティングの基本的な考え方から、採用ブランディング・採用広報との違い、採用ファネル、具体的な進め方、フレームワーク、主な手法までわかりやすく解説します。
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採用マーケティングとは|基本的な考え方
採用マーケティングとは、マーケティングの考え方や手法を採用活動に取り入れ、必要な人材との接点づくりから応募、選考、入社までを一貫して設計・改善していく考え方です。
一般的なマーケティングでは、顧客のニーズを理解し、自社の商品やサービスを知ってもらい、比較・検討を経て購入につなげます。採用マーケティングでは、顧客を「候補者」、商品やサービスを「企業で働くという選択肢」に置き換えて考えます。
従来の採用活動との違い
従来の採用活動では、求人媒体への掲載や人材紹介会社への依頼など、すでに転職活動を始めている人へのアプローチが中心になりやすい傾向があります。一方、採用マーケティングでは、まだ具体的に転職活動をしていない人も含めて対象を考えます。
自社を知らない段階から接点を作り、候補者の関心やニーズに応じた情報を届けることで、「この会社で働くことを検討したい」と思ってもらうまでの流れを設計します。
採用活動を「点」ではなく「プロセス」で捉える
採用マーケティングの特徴は、求人掲載や面接といった個別施策だけを見るのではなく、候補者が企業を認知してから入社するまでを一つのプロセスとして捉えることです。
たとえば応募数が少ない場合でも、原因が求人原稿だけにあるとは限りません。そもそも自社の認知が不足している、候補者が知りたい情報を発信できていない、競合企業との違いが伝わっていないなど、前段階に課題がある可能性もあります。こうした課題を段階ごとに整理し、改善していくのが採用マーケティングです。
採用マーケティングが注目されている背景
採用マーケティングが注目される背景には、働き手となる人口の減少や、転職潜在層の存在、仕事選びの価値観の多様化などがあります。主な背景は次の3つです。
働き手となる人口の減少が見込まれている
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」では、全国の15~64歳人口は2020年の約7,509万人から、2050年には約5,540万人になると推計されています。2020年を100とすると2050年は73.8となり、長期的には採用対象となり得る人口そのものが減少していく見込みです。
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」
採用市場が縮小する環境では、求人を出せば必要な人数を確保できるとは限りません。自社が必要とする人材を明確にし、競合企業との違いを整理したうえで、継続的に候補者との接点を作る重要性が高まります。
転職意向があっても、求職活動をしていない人は多い
総務省「労働力調査(詳細集計)2025年平均結果」によると、2025年平均の「転職等希望者」は1,023万人でした。そのうち求職者は360万人、非求職者は663万人です。転職等を希望していても、具体的な求職活動をしていない人が多数存在することがわかります。
出典:総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2025年平均結果」
求人媒体や求人検索だけを入口にすると、こうした潜在層との接点を作りにくい場合があります。採用サイト、SNS、オウンドメディア、イベント、スカウトなど複数の接点を活用し、転職活動を始める前から自社を知ってもらうことが重要です。
候補者が仕事選びで重視する条件は多様化している
厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」では、15~34歳の若年正社員の31.2%が、現在の会社から今後「転職したいと思っている」と回答しています。転職したい理由では、「賃金の条件がよい会社にかわりたい」が59.9%、「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」が50.0%でした。
■転職しようと思う理由別若年正社員割合
出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」
採用では給与だけでなく、仕事内容、働き方、キャリア、職場環境など、候補者が何を重視しているかを理解したうえで、自社の魅力を伝える必要があります。採用マーケティングでは、こうした候補者ニーズを起点に訴求内容を設計します。
採用マーケティングと採用ブランディング・採用広報の違い
採用マーケティングと似た言葉に「採用ブランディング」「採用広報」があります。それぞれは重なる部分もありますが、目的や役割が異なります。
採用ブランディングや採用広報は、採用マーケティングを構成する重要な取り組みの一部と考えると整理しやすいでしょう。たとえば採用マーケティングの分析から「認知不足」が課題だとわかれば、採用広報を強化する、「競合と比較したときに自社の魅力が伝わりにくい」とわかれば、採用ブランディングを見直すといった形です。
採用マーケティングで重要な「採用ファネル」とは
採用ファネルとは、候補者が企業を知ってから入社に至るまでを段階に分けて捉える考え方です。ファネルを用いることで、「どの段階に課題があるのか」「どこに施策を打つべきか」を整理しやすくなります。本記事では次の6段階で整理します。
ファネルの各段階で候補者数や移行率を確認すると、課題を感覚ではなく数値で把握しやすくなります。たとえば認知数は十分なのに応募が少ない場合は、企業理解や比較検討の段階に課題がある可能性があります。
採用マーケティングで設定したいKPI
採用マーケティングでは、最終的な採用人数だけでなく、その手前の指標も確認します。ファネルの段階ごとにKPIを設定すると、課題がある箇所を特定しやすくなります。
KPIは多ければよいわけではありません。自社の採用課題に直結する指標を優先し、定期的に確認できる運用にすることが大切です。
採用マーケティングに取り組むメリット
採用マーケティングに取り組むことで、潜在層との接点拡大やターゲットの明確化、チャネル選定、継続的な改善などが期待できます。主なメリットは次の4つです。
転職潜在層にもアプローチしやすくなる
求人を探している顕在層だけでなく、将来的に転職を検討する可能性がある潜在層も対象に含められることがメリットです。早い段階から自社を知ってもらうことで、候補者が転職を考え始めた際の選択肢に入りやすくなります。
自社に合う人材を具体的に考えられる
採用マーケティングでは、採用したい人材のスキルだけでなく、価値観や転職理由、情報収集方法なども整理します。ターゲット像を具体化することで、求人原稿、スカウト、面接など各施策のメッセージに一貫性を持たせやすくなります。
採用チャネルを目的に応じて選びやすくなる
採用手法にはそれぞれ得意な領域があります。応募数を増やしたい場合と、専門性の高い人材とのマッチングを重視したい場合では、選ぶべき手法が同じとは限りません。採用課題を明確にすることで、施策を「流行しているから」ではなく目的から選べるようになります。
データをもとに継続的に改善できる
応募数だけでなく、採用サイトの閲覧、求人閲覧、応募率、書類通過率、面接通過率、内定承諾率などを確認することで、どこにボトルネックがあるかを特定できます。改善を繰り返すことで、採用活動を属人的な経験だけに頼らず運用しやすくなります。
採用マーケティングの進め方【6ステップ】
採用マーケティングは、いきなりSNSや採用サイトの施策を始めるのではなく、採用課題やターゲットを整理したうえで進めることが重要です。ここでは基本的な流れを6つのステップで紹介します。
STEP1.自社の採用課題を把握する
採用人数、応募数、選考通過率、内定承諾率、採用単価、入社後の定着状況などを確認します。「応募が少ない」「選考途中の辞退が多い」「採用できても定着しない」など、まずはどの段階に課題があるかを整理します。
STEP2.採用したい人物像・ペルソナを設定する
必要な経験やスキルだけでなく、仕事選びで重視すること、転職を考えるきっかけ、よく利用する情報源なども具体化します。ただし、年齢や性別など採用上不要な属性で過度に対象を狭めないことも大切です。
STEP3.自社の採用上の強みを整理する
候補者が比較する企業を想定し、自社ならではの魅力を整理します。仕事内容、キャリア、働き方、組織風土、待遇、社会的な意義など、候補者にとって価値となる要素を具体化します。
STEP4.キャンディデイトジャーニーを設計する
候補者が自社を知り、調べ、比較し、応募・入社するまでに、どのような疑問や不安を持つかを整理します。それぞれの段階で必要な情報と接点を決めます。
STEP5.ターゲットに合った手法・チャネルを選ぶ
求人媒体、人材紹介、ダイレクトリクルーティング、採用サイト、SNS、イベントなどから、目的とターゲットに合うものを組み合わせます。一つのチャネルですべてを解決しようとせず、ファネルの段階ごとに役割を分けることがポイントです。
STEP6.KPIを設定して効果測定・改善する
施策を実行したら、設定したKPIを定期的に確認します。成果が出ていない場合は、ターゲット、メッセージ、チャネル、選考プロセスなどを見直し、改善を続けます。
採用マーケティングで活用できるフレームワーク
採用マーケティングでは、一般的なマーケティングで用いられるフレームワークを採用活動に応用できます。すべてを使う必要はありません。解決したい課題に合わせて選びましょう。代表的なフレームワークは次の5つです。
採用マーケティングの主な手法
採用マーケティングでは、候補者の状態や採用課題に応じて複数の手法を組み合わせます。重要なのは、手法そのものではなく「何を改善するために使うのか」を明確にすることです。主な手法は次の7つです。
採用経路(採用チャネル)は「効果の違い」を踏まえて選ぶ
厚生労働省委託の「企業における採用経路の選択動向等に関する調査研究」では、中途採用・経験者採用を実施する1,057社を対象に、6つの採用経路の利用率を調査しています。
出典:厚生労働省委託「企業における採用経路の選択動向等に関する調査研究」
採用経路別の効果を実感したポイント
さらに6つの採用経路で企業が感じる効果を調査しています。
出典:厚生労働省委託「企業における採用経路の選択動向等に関する調査研究」
それぞれ最も評価された項目を見ると、ハローワークは「費用の安さ」86.5%、人材派遣は「採用に至るまでのスピード」61.2%、求人情報誌・求人サイトは「求職者からの応募数」73.2%、職業紹介は「求める人材に対するマッチングの的確性」52.1%、スカウトサービスは同49.2%でした。
採用経路によって強みは大きく異なります。そのため応募数、採用スピード、マッチングなど、自社が解決したい課題に応じてチャネルを選び、必要に応じて組み合わせることが重要です。
採用マーケティングを成功させるポイント
採用マーケティングを成果につなげるには、施策を増やすだけでなく、ターゲット・訴求・運用体制・データ活用を一貫させることが重要です。主なポイントは次の5つです。
採用したい人物像を具体化する
「優秀な人」「コミュニケーション力が高い人」といった抽象的な条件だけでは、チャネルやメッセージを設計しにくくなります。必要な経験・スキルと、候補者が仕事に求める価値の両方を整理しましょう。
候補者視点で自社の魅力を整理する
企業側が伝えたいことと、候補者が知りたいことは必ずしも一致しません。制度の有無だけでなく、それによってどのような働き方やキャリアが実現できるのかまで具体的に伝えることが重要です。
手法ありきで施策を選ばない
SNS、動画、スカウトなどの手法を導入すること自体を目的にしないよう注意が必要です。まずファネル上の課題を特定し、その課題を解決できるチャネルを選びます。
採用部門と現場が連携する
仕事内容や求める人材像を正確に伝えるには、採用担当者だけでなく配属部門との連携が欠かせません。選考基準や候補者へのメッセージをすり合わせることで、採用活動の一貫性を高められます。
データを蓄積して継続的に改善する
一度設計して終わりではなく、応募状況や選考データ、候補者からの反応を確認しながら改善します。採用市場や候補者ニーズも変化するため、定期的な見直しが必要です。
採用マーケティングで自社に合った人材の採用につなげよう
採用マーケティングは、単に採用活動で広告やSNSを活用することではありません。採用市場と候補者を理解し、自社が必要とする人材を明確にしたうえで、認知から応募・入社までのプロセスを設計し、データをもとに改善していく取り組みです。
働き手となる人口の減少や、転職意向があっても求職活動をしていない潜在層の存在を考えると、今後は「求人を出して応募を待つ」だけではなく、候補者との接点を広げながら、自社で働く魅力を適切に届けていくことが一層重要になります。
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