人事ノウハウ

DX・AI活用が現場で進まない理由とは?戦略を「追加業務」で終わらせない4つのステップ

2026/09/04

DX・AI活用が現場で進まない理由とは?戦略を「追加業務」で終わらせない4つのステップ

このページでわかること

  • DXやAI活用などの戦略が、現場で「追加業務」になってしまう原因
  • 戦略を現場に落とし込むための4つのステップ
  • 業務の組み換えとリスキリングをセットで進める理由
  • BPOなどの外部支援を活用する考え方

監修:
アデコ株式会社 エンタープライズアウトソーシング本部
ビジネスプロセスイノベーション部 部長 渡邊 賢太郎

DX推進やAI活用、人的資本経営、生産性向上など、企業が取り組むべき課題は増え続けています。しかし、経営層で方針を打ち出しても、現場へは浸透せずに期待した成果につながらないケースは少なくありません。

その原因は、現場の意欲やスキルだけではなく、既存業務を変えないまま、その施策を「追加業務」として上乗せしていることにあります。戦略を現場へ落とし込むには、業務を増やすのではなく、既存業務・人材・運用を「現場で回る形」に組み替える必要があります。

本記事では、コンタクトセンターやバックオフィスの運営・管理、BPR、DX・AI活用などを支援してきたアデコ株式会社 ビジネスプロセスイノベーション部 部長 渡邊賢太郎が、戦略を現場に反映するための考え方と進め方を解説します。

(※本記事は、SBクリエイティブ株式会社 (ビジネス+IT)主催『Business Innovation Conference Online 2026 夏AI経営による自律型ビジネスへ、データ駆動型の意思決定とビジネスモデルの変革』へ登壇した際の内容をもとに、Web記事として再構成したものです。)

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DX・AI活用が現場で進まないのはなぜか

中長期経営計画、DX推進、AI活用、人的資本経営などは、企業価値を高めるための重要な戦略です。一方、各企業の現場では、限られた人員と時間で、日々の業務を運用し続けています。この状況で、戦略の策定に伴い、現場に新しい施策が加わると、現場は「追加業務」として捉えることがあります。

たとえば、AIを導入したものの、活用方法を検討する会議が増える、RPAを導入した後に対象業務を探し始める、ツールの動作確認やエラー対応に新たな手間がかかる、といった状態です。DXやAI活用という手段が先行すると、現場は既存業務に新しいツールを後付けすることになり、かえって作業や負担が増える場合があります。

DXやAI活用を現場に浸透させるには、「追加業務」となる新しい施策を現場に課すことではなく、既存業務の流れや役割を見直し、フローそのものを変えることです。

問題は現場の「やる気」ではなく「動けない構造」

多くの企業の現場では、表面化はしていなくても、業務の可視化不足、属人化、部署間の連携不足、役割分担の曖昧さ、評価指標の不明確さなど、複数の部門をまたいだ複雑な課題が絡み合っています。既存業務をこなすためのリソースしかない状態で、DX推進やAI活用のために、新たに、調査、会議、PoC、レポート作成などが加われば、現場の余力はさらに失われます。

現場は「新しい変化を受け入れたくない」のではなく、変化を受け入れるための「余裕」がないのです。戦略が止まる原因は、個人ではなく、「新しいことに対応する余力がない業務構造」として捉える必要があります。

現場の「動けない構造」

戦略を動かすには、業務・人材・運用を組み替える

戦略を現場へ落とし込むには、「何を新しく始めるか」だけでなく、まず「既存業務をどう変えるか」「何をやめるか」を考えることが重要です。DX後やAI導入後に既存業務のプロセスはどう変わるのか、その業務を担当していた社員の役割はどう変わるのか、生まれた時間をどの業務に充て、人材をどの成長領域へ配置するのかを設計します。

目指すべきなのは、DXやAIを導入すること自体ではなく、戦略の実行を通じて企業の価値を高めることです。そのためには、対象の業務だけでなく、戦略実行後の人材配置や役割、運用方法までを再設計する必要があります。

戦略を止めない業務基盤をつくる4つのステップ

戦略を「追加業務」で終わらせず、現場で運用できる仕組みに変えるために、次の4ステップで進めましょう。

Step1|現状を把握する

まずは業務の棚卸しを行い、業務内容やプロセス、ルール、ナレッジ、必要なスキル、工数、人員体制、KPIなどを整理します。この段階では、すぐにムダや問題点を探すのではなく、現状を正確に把握することが重要です。

ただし、現場に目的を伝えずに棚卸しを進めると、「業務や人員を削減するための調査ではないか」といった不安を招くことがあります。改革の目的を共有し、推進部門と現場が協力して取り組む姿勢を示すことが必要です。

Step2|「あるべき姿」を設計する

上記の現状把握をもとに、戦略を実現するための「あるべき姿」を設計します。業務要件を定義し、プロセス、ツール、必要なスキル、人員体制、KPIなどを見直します。

そのうえで、自動化・標準化できる業務、DXやAIを活用する業務、人が担う業務を整理します。必要に応じて、業務の一部を外部に委託することも選択肢となります。

業務の流れだけでなく、人の役割や運用方法、必要なスキルまであわせて見直すことで、現場で実行できる設計につながります。

Step3|現場と合意形成する

次に、戦略によって業務の進め方や役割分担がどのように変わるのか、具体的なイメージを現場と共有します。現場の担当者が今後どのような業務を担うのか、現場の担当者が今後どのような業務を担うのか、必要となるスキルや体制も含めて説明し、意見や懸念を確認します。

現場から寄せられた意見は、必要に応じて「あるべき姿」の設計に反映し、今後の変革について認識をそろえます。現場から質問や反対意見がまったく出ない場合は、「完全合意」ではなく、現場が十分に論点を理解できていない可能性もあります。合意形成は、決定事項を一方的に伝える場ではなく、現場と対話しながら実行可能な形へ整える工程です。

Step4|実行し、測定・評価・改善する

合意した内容を実行計画へ落とし込み、プロジェクトとして推進します。定期的に進捗、工数、KPIなどを確認し、課題があればフォローや軌道修正を行います。また、定期的に現場へ進捗報告を行います。プロジェクト管理は、一度決めた計画を守るだけの工程ではありません。成果を評価し、必要に応じて計画・役割・運用を修正しながら、変革の定着まで見届けることが重要です。

戦略を止めない業務基盤をつくるための4つのステップ

リスキリングは業務の組み換えとセットで行う

上記のステップで業務の棚卸しや担当者の役割の見直しを行うと、現場の担当者に今後必要となるスキルも明確になります。そこで検討したいのが、従業員のリスキリングです。

リスキリングを実効性のある取り組みにするには、研修を先に用意するのではなく、将来の業務と役割を定義し、そこで必要となるスキルを明らかにすることが重要です。

現在の業務に追われたままでは、新しいスキルを習得する必要性を感じにくく、学ぶ時間も確保できません。業務の標準化や運用方法の見直し、必要に応じた外部委託によって定型業務の負担を減らし、新たな役割を担うための時間を生み出す必要があります。

業務を変えずに人だけを育てるのではなく、業務の変革と人材育成をあわせて進めることが重要です。

業務の組み換えによる余力創出とリスキリング

外部支援も選択肢に

現状把握から設計、合意形成、実行管理までを自社だけで進めようとすると、社内の先入観や部門間の温度差、現場への配慮から慎重になりすぎることなどによって、抜本的な見直しが難しくなる場合があります。

その場合は、外部の知見やBPOを活用することも選択肢です。BPOは人手不足の補完やコスト削減だけではなく、業務を設計し、整え、運用し、測定・評価し、継続的に改善するための手段として活用できます。

アデコでは、Re:Process360°の考え方に基づき、現状業務の調査・分析から改善機会の抽出、「あるべき姿」の設計、運用、測定・評価、リスキリングまで、企業の戦略や課題に応じた支援を行っています。

まとめ|戦略は「現場で回る形」になって初めて実行される

DX推進、AI活用、人的資本経営などは、企業価値を高めるための重要な取り組みです。しかし、既存業務の上に施策を追加するだけでは、現場の負担が増え、本来の価値は生まれません。

重要なのは、現状を理解し、業務・人材・運用を再設計し、現場と合意したうえで、実行と改善を続けることです。「新しい施策として何を足すか」ではなく、「仕事をどう組み直すか」という視点を持つことではじめて、戦略は現場で回り始めます。

アデコでは、AIやDXを活用したBPOサービスを提供しています。AIを活用できる業務の選定や業務フローの見直しなど、アウトソーシング・BPOに関するご相談は、アデコまでお問い合わせください。

監修者プロフィール

渡邊 賢太郎
渡邊 賢太郎
(アデコ株式会社 エンタープライズアウトソーシング本部 ビジネスプロセスイノベーション部 部長)
コンタクトセンターやバックオフィスのマネジメント経験を基盤に、業務改革・業務変革を専門領域として活動。
業務課題を整理し、改革構想、運用定着まで一貫して支援することで、実効性の高い業務変革を推進している。
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