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三菱重工相模原ダイナボアーズOB二人に聞く、競技で培った力を次の役割へ

三菱重工相模原ダイナボアーズOB二人に聞く、競技で培った力を次の役割へ(特別インタビュー)

ラグビー選手としてキャリアを歩んできた徳田亮真氏と奈良望氏。現役を退いた今も、二人は三菱重工相模原ダイナボアーズを支える立場としてチームに関わり続けています。

アスリートのキャリアは、しばしば「引退後のセカンドキャリア」という言葉で語られます。しかし実際には、競技生活とその後の仕事は切り離されたものではありません。競技の中で培った価値観や行動特性は、役割が変わっても生かされています。

では、二人は競技生活の中で何を培い、それを現在の仕事にどのようにつなげているのでしょうか。選手からチームを支える立場へと役割を変えた二人に、その経験と現在の思いを聞きました。

チーム概要

三菱重工相模原ダイナボアーズは、神奈川県相模原市を拠点に活動するラグビーチームです。ジャパンラグビー リーグワンに参戦し、日本一を目指して戦う一方、地域に根差したクラブとして、ラグビーの普及や地域貢献にも力を注いでいます。「ラグビーを通じて、すべての人々と、夢と感動をともにわかちあい、ともに成長していく」をミッションに掲げ、競技と地域活動の両面から、地域に愛されるチームづくりを進めています。

プロフィール

徳田亮真 氏

三菱重工相模原ダイナボアーズ
徳田亮真 氏

現役時代はロックを務め、188cm・105kgの恵まれた体格と豊富な運動量を武器に、ハードワーカーとしてチームを支えた。東大阪大柏原高校を経て加入し、リーグワンでは5キャップを記録。現役引退後は、三菱重工相模原ダイナボアーズのアシスタントチームディレクターに就任し、選手を支える立場からチーム運営に尽力している。

奈良望 氏

三菱重工相模原ダイナボアーズ
奈良望 氏

現役時代はセンターやウィングを務め、状況に応じて多様な役割をこなす「器用な何でも屋さん」としてチームに貢献した。秋田工業高校から法政大学を経て、リーグワンでは25キャップを記録。現役引退後は、三菱重工相模原ダイナボアーズのホームタウン担当に就任し、地域とチームを強固につなぐ役割を担っている。

ユニフォームを脱いだ後も、チームとの関係は続いている

現在は、どのような立場でチームに関わっていますか。

徳田氏アシスタントチームディレクターとして、チーム運営を支えています。今は、選手が競技に集中できる環境をどうつくるか、スタッフ間でどう連携するかなど、チーム全体を見る立場になりました。

奈良氏ホームタウン担当として、地域の方々とダイナボアーズをつなぐ仕事をしています。今は地域との関係をつくり、チームを身近に感じてもらうことが自分の役割です。

立場が変わって見えた、支える人たちの存在

選手からスタッフへ立場が変わり、見え方は変わりましたか。

徳田氏選手を辞めてスタッフになった時、自分に求められる仕事が全然できないことを強く感じました。プレーについては長く経験してきた自信がありましたが、運営やマネジメントは分からないことばかりでした。なので、まず自分にできることから始めました。何が決まっていないのか、何が不明確なのかを把握して、必要なルールを周囲と一緒につくっていく。できないことを認めて、できることを探して動く姿勢は、選手時代と変わっていないと思います。

奈良氏選手の頃は、イベントに参加する時も、最後の自分たちが参加する場面だけを見ていました。裏方に回ってみると、その前に地域の方へ挨拶に行き、関係をつくり、依頼をいただき、選手が参加できるところまで整える人がいる。選手の時には当たり前だと思っていた環境が、見えないところで多くの人に支えられていたことを実感しました。グラウンドの外で地域との関係をつくることも、チームの力になると感じています。

現役時代に培ったものは、仕事でどう生きるのか

現役時代、ご自身が大切にしていたことは何ですか。

徳田氏ぱっと思い浮かぶのは「一貫性」です。練習に対しても、そのための準備を常にする。自分に対して嘘をつかない。日によって波をつくらず、エネルギーを高い状態で持ち続けることを意識していました。高校卒業後、このチームに入ってから、ほとんど試合に出られない時期がありました。「なぜ出られないのか」「自分に何が必要なのか」を考えていく中で、一貫して自分を高めることが大事だと気づきました。

奈良氏僕は、チームに求められていることに、どれだけ100%コミットできるかを大切にしていました。試合ごとに戦い方も、自分に求められる役割も変わります。僕自身は、一人で局面を変えられるような選手ではありませんでした。だからこそ、周りの強い選手をどう生かすか、そのために自分がどこで力を出せばよいかを考えていました。周囲をよく見て、指示の意味や相手が求めていることをくみ取ることを意識していました。

選手経験があるからこそできる、二つの橋渡し

現在の仕事で、選手経験はどのように生きていますか。

徳田氏選手時代は、自分が率先してやり続ければ、周りもついてきてくれると思っていました。実際、それで動いてくれることもありました。でも、スタッフになって同じやり方を続けても、なかなか伝わらない。「こっちではない」と気づきました。目指すものは変わらなくても、立場が変わればアプローチは変えなければならない。今は選手が何を考えているかを理解しながら、選手だけに寄るのではなく、チームという組織にとって何がよいかを考えています。選手とスタッフの間の潤滑油になることが、今の自分のミッションです。

奈良氏引退した時は、プレーをしない生活や、裏方の仕事を想像できていませんでした。最初は、いわゆる営業や渉外活動をラグビーとは別のものとして、切り離して考えていたと思います。でも、地域の方々と話し、イベントやチームとの接点を一つずつつくる中で、選手としての経験やチームを知っていることが活きると気づきました。団体や企業によって求めていることは違います。コミュニケーションを取りながらそれを感じ取り、チームの魅力が届く形を考える。現役時代に周りを見て役割を考えていたことが、今の仕事にもつながっています。

自分の成長を、チームの成長へつなげる

現役選手に、今だからこそ伝えたいことはありますか。

奈良氏現役でいられる時間には限りがあります。その時間を少しでも長く、充実したものにするために、自分がどう成長するかを考えてほしいです。自分が強くなれば、チームも強くなる。自分と向き合い、仲間を助けながら、全員で上を目指せるチームをつくってほしいと思います。

徳田氏競技をうまくなるため、成長するために、選手は日々考え、試行錯誤していると思います。その力は、競技以外の仕事でも使えるはずです。自分自身と向き合い、楽な方へ流れず、自分を高め続けてほしい。同時に、選手が競技に向き合える環境の後ろには、自分のために動いている人がいることも、心のどこかに置いてほしいです。

キャリアは、引退後に始まるものではない

引退は、競技者としてのキャリアが終わり、別のキャリアが始まる境目ではありません。一本のキャリアの中で、競技者として培った経験や強みを次の役割へつなぐトランジションです。だからこそ、準備は引退が決まった時に始めるのではなく、現役中から、自分が何を大切にし、どのように周囲へ働きかけ、何を培っているのかに気づくことから始まります。

徳田氏と奈良氏の歩みは、競技経験の生かされ方が一つではないことを示しています。一貫して自分を高める力も、周囲を見て役割を変える力も、その人ならではのキャリア資産です。選手本人と組織が現役中から対話し、その力を言葉にすることで、競技で培ったものは、次の仕事やチーム、地域の力へ変わっていきます。

現役中のキャリア形成は、競技の妨げなのか

スポーツ庁は、アスリートが安心して競技に専念できるよう、現役時代から将来を見据えてキャリアを形成することの重要性を示しています。また、前述のスポーツ庁による令和7年度の事業報告では、中央競技団体や自治体の参画が限定的であり、競技団体や地域スポーツ関係機関との連携強化が課題とされています。

では、現役中からキャリアを考えることは、競技への集中を妨げるのでしょうか。

現役中のキャリア形成は、次の職業を早く決めることに限られません。競技に取り組む中で、自分が何を大切にし、どのように課題へ向き合い、チームにどう働きかけているのかを振り返ることも、その一つです。スポーツ庁は、現役時代から自身が培っている力やキャリア資産を認識することが、生涯にわたって役立つ力の蓄積に加え、競技力の向上にもつながることが期待されるとしています。

徳田氏の「一貫性」は、将来の仕事のために競技とは別の活動を始めたことで身についたものではありません。試合に出られない時期にも、「なぜ出られないのか」「自分に何が必要なのか」を考え、競技へ向き合い続ける中で形づくられました。

奈良氏の「周囲を見て、自分に求められる役割を選ぶ力」も、チームが強くなるために自分は何ができるかを考え続ける中で培われたものです。

二人が現在の仕事に生かしているのは、競技以外の準備によって得た力ではなく、競技へ真剣に向き合う過程で育んだ力です。その力に現役中から気づき、言葉にすることは、競技と将来のどちらかを選ぶことではありません。今の競技経験を、一本のキャリアの中に位置づけることです。

ただし、すべての選手に同じ学習や活動を求めることが答えではありません。選手本人が何を望み、どのような競技状況にあるのかによって、必要な機会やタイミングは異なります。

キャリアを築く主体は選手本人です。企業やチームが本人に代わって将来を決めるのではなく、選手が自身の経験を振り返り、競技を通じて培っている力に気づけるよう、それぞれの組織に合った関わり方をともに探ることが大切ではないでしょうか。
自社の社員選手に、競技生活を通じてどのような力を培い、どのような人材へ成長してほしいと考えているでしょうか。その考えを選手本人と共有し、本人の希望や競技状況も踏まえながら、自社・自チームに合った支援の形をともに探れているでしょうか。

アデコ アスリートプログラムについて

The Adecco Groupは、2005年から2024年までIOC、2007年から2024年までIPCとの連携によるCSR活動を通じて、オリンピアン・パラリンピアンのキャリア・トランジションを支援してきました。この取り組みと並行して、2020年に対象をオリンピアン・パラリンピアンに限定しない「アスリートプログラム」をグローバルで立ち上げ、日本では2021年からCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)として展開しています。

日本のアスリートプログラムでは、国際的な活動を通じて培ったキャリア・トランジション支援の知見と、人材開発や組織変革など企業人事に関する知見を組み合わせ、プロチームや実業団など、それぞれの環境や課題に応じた支援を進めています。あらかじめ決めた支援策を当てはめるのではなく、選手にどのように成長してほしいのか、競技経験をその後の役割へどうつなげたいのかを企業・チームとともに考え、選手本人の希望と重ねながら、その組織に合った支援の形を探っていきます。

アデコ アスリートプログラムが目指すのは、引退後の進路を早く決めることではありません。現役中から、自身の価値観や強み、競技を通じて培った力に気づき、それを言葉にし、競技者としても一人の人としても成長できる基盤をつくることです。競技から次の役割へ移る際には、それまでの経験をリセットするのではなく、自己理解、キャリアデザイン、ポータブルスキル、ビジネススキルなどを段階的に育み、新たな環境へ適応できるよう支援します。
アデコは、競技生活とその後を一本のキャリアとして捉え、現役中からのデュアルキャリア形成と、役割が変わる時のキャリア・トランジションを一つの連続したプロセスとして支援します。アスリート本人と、選手を支えるチームや企業の双方に伴走していきます。